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巨人・福田投手が「野球賭博」の疑い――どんな「罪」に問われる可能性があるのか?
2015年10月16日 13時00分

クライマックスシリーズ中のプロ野球界が揺れている。巨人が10月上旬、緊急記者会見を開いて、同チームに所属する福田聡志投手が野球賭博に関与した疑いがあると発表したからだ。

報道によると、福田投手は、同僚の笠原将生投手に紹介された知人に誘われ、今年8月~9月上旬にかけて、夏の甲子園やプロ野球の試合、米大リーグの試合を対象に賭けをおこなったという。そのなかには、巨人戦3~4試合も含まれていたそうだ。

野球協約で、プロ野球選手は野球賭博をおこなうことを禁止されている。巨人はすでに日本野球機構(NPB)のコミッショナーに告発しており、福田投手と笠原投手は謹慎処分となっている。さらに、刑法の賭博罪にあたる可能性もあるとして、警察への告発も検討しているということだ。

今回のケースについて、NPBは事実関係の調査を進めているが、一般的にいって、野球賭博はどんな場合に犯罪となるのだろうか。賭博罪にくわしい津田岳宏弁護士に聞いた。

クライマックスシリーズ中のプロ野球界が揺れている。巨人が10月上旬、緊急記者会見を開いて、同チームに所属する福田聡志投手が野球賭博に関与した疑いがあると発表したからだ。

報道によると、福田投手は、同僚の笠原将生投手に紹介された知人に誘われ、今年8月~9月上旬にかけて、夏の甲子園やプロ野球の試合、米大リーグの試合を対象に賭けをおこなったという。そのなかには、巨人戦3~4試合も含まれていたそうだ。

野球協約で、プロ野球選手は野球賭博をおこなうことを禁止されている。巨人はすでに日本野球機構(NPB)のコミッショナーに告発しており、福田投手と笠原投手は謹慎処分となっている。さらに、刑法の賭博罪にあたる可能性もあるとして、警察への告発も検討しているということだ。

今回のケースについて、NPBは事実関係の調査を進めているが、一般的にいって、野球賭博はどんな場合に犯罪となるのだろうか。賭博罪にくわしい津田岳宏弁護士に聞いた。

●「八百長」の有無で罪が変わる

「野球の勝敗について、お金を賭けると賭博罪にあたります」

津田弁護士はこう切り出した。賭博罪にあたらない「賭け」はあるのだろうか。

「判例理論によれば、『勝ったほうが明日のランチをおごる』という程度の賭けならば、賭博罪にはなりません。しかし、たとえ少額でも、お金を賭けると賭博罪にあたります。

もっとも、検察官が賭博捜査の実務について著した文献には、『些細な賭けまで全て検挙することは国民の無用の反発を買うことになる』とも書かれています。

たとえば、『勝ったほうが500円を払う』という程度の賭けであれば、形式的には賭博罪にあたる行為ですが、実際に捕まる可能性はきわめて低いと考えられます」

報道によると、福田投手の負け額は100万円を超えていたという。今回のケースについては、どう見るのだろうか。

「今回については、違法な賭博をしたという点がもちろん問題ですが、それよりも福田投手が現役選手であるという点が大きな問題です。

今回のケースでは、八百長に関わった可能性は低いと報じられていますが、仮に現役選手が野球賭博に絡んで八百長に加担したり、内部情報を漏洩すれば、賭博罪にとどまらず、『詐欺罪のほう助』ということになりかねません。

八百長によって、イカサマ賭博がされれば、それは賭博罪よりも格段に重い詐欺罪にあたります。

また、プロ野球の信用も著しく阻害され、その存在そのものが危うくなります。プロ野球史上最悪の八百長事件である『黒い霧事件』が起きたときは、パ・リーグが消滅寸前になりました。それゆえ、野球協約は野球賭博について、きわめて重い処分を課しているのです」

●野球界から「重い処分」を受ける可能性が大きい

報道によると、福田投手が関わったとされる賭けでは、当日の試合ごとに『ハンデ』をつける方式がおこなわれていたようだ。

「『ハンデ』とは、チームの実力差や状況などによって、その差を調整するルールです。野球賭博でいえば、たとえば、巨人から広島に『ハンデ2点』となっていたとします。この場合、広島が1点差で負けた場合でも、賭けのうえでは『広島に賭けた人の勝ち』とするのです。

このルールでおこなわれる野球賭博は、『適正なハンデ』が出ないと賭けが成立しないので、組織的におこなわれます。そして、そこには反社会的勢力が絡んでいることも多いといわれています。

もし仮に、反社会的勢力の資金源になるような賭博に手を出していたとすれば、その点も罪は重いといえるでしょう」

はたして、どんな処分になるのだろうか。

「福田投手の場合、賭博をおこなっていたと確定した場合でも、刑事処分としては軽い処分にとどまるでしょう。しかし、野球界からは重い処分を受けることは間違いなく、それはやむを得ないことだと思います。

なお、福田投手はギャンブル好きだったと報道されていますが、日本には合法的にできるギャンブルもたくさんあります。やっていいギャンブルと、やってはいけないギャンブルをちゃんと教えてあげる人が周りにいればよかったのに・・・とも思いますね」

津田弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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