犯罪・刑事事件の解決事例
#過失割合 . #慰謝料・損害賠償

どちらがセンターラインオーバーしたのか(警察の認定を覆した事例)

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山岡 大 弁護士が解決
所属事務所あさかぜ法律事務所
所在地和歌山県 和歌山市

この事例の依頼主

年齢・性別 非公開

相談前の状況

片側1車線のセンターラインのあるゆるやかなカーブで,乗用車とトラックが正面衝突した事故について,どちらの車両がセンターラインをオーバーしたのかが問題となりました。センターラインがあるのに,いずれかの車両がそれを超えて反対車線に進入して衝突した場合,過失割合は原則として,センターラインを超えた方が100%となります。この事故では,警察の実況見分調書では,乗用車側がセンターラインをオーバーしたとして処理されていました。いずれも自車がセンターラインをオーバーしたという認識ではありませんでした。こちらの依頼者は,事故により怪我を負っており,事故の当時の記憶が曖昧であることもあって,いったんは自分の車両がセンターラインをオーバーしたことを認めていました。しかし,その後,やはり自分はセンターラインをオーバーしていないと主張して,裁判になりました。

解決への流れ

この事故では,衝突現場付近のトラック側の車線の中央線に近いところに一本のタイヤ痕が印象されていました。これがトラックのものであることは明らかだったのですが,一本しかなかったために,これがトラックの右のタイヤによって付けられたものか,左のタイヤによって付けられたものかが問題となりました。右のタイヤによって付けられたものならば,トラックはセンターラインをオーバーしていないことになります。他方で,左のタイヤによって付けられたものならば,トラックの右タイヤは中央線を越えていることになり,トラックがセンターラインをオーバーしたことになります。裁判では,この点が大きな争点となり,自動車工学の専門家による鑑定書を提出し,さらには尋問も行いました。その結果,一審判決は,当方の主張どおり,トラックがセンターラインをオーバーしたと認定され,トラック側の過失が100%であるとされました。警察による実況見分調書では,乗用車側のセンターラインオーバーとされていた事故原因について,自動車工学鑑定などの結果により,警察の認定を覆してトラック側のセンターラインオーバーと認定されたという点で,珍しい事案となりました。なお,この点は控訴審で和解しています。

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山岡 大 弁護士からのコメント

この事故では,こちらの車両がセンターラインをオーバーしたという実況見分調書が作成されていました。裁判では,警察官の作成した実況見分調書の信憑性は高いものと考えられ,おおむねそれに沿って進められることがほとんどです。しかし,この事故の実況見分調書は,そこに記載された痕跡と,事故状況が明らかに整合しないものでした。普段から交通事故を専門的に取り扱い,かつ,事故によって路面などにどのような傷跡が残るのか,ということに留意していなければ,実況見分調書の記載の不自然さに気づくことができません(ほとんどの実況見分調書は信用できるものですので,念のため。)。